生きるためのセミリタイア

当たり前を疑い、40代セミリタイアを目指す

「家畜化という進化ー人間はいかに動物を変えたか」1~要約と感想

人間は動物を作り替えてきた。別の種類の動物であっても、そのプロセスには共通したところがある。

 

キツネのうち従順性の高いものを人為的に選択し、何世代か掛け合わせていく実験が行われた。 この実験の話が本書では繰り返し出てくる。 

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家畜化された動物の特徴

従順性、人間の意図を読み取る能力
(人間が近づいても怖がらない・逃げない、他の個体と接近したときも同様。これは社会性の高さでもあり、幼児・若者の特徴)
毛色の多様性(特に自然界にはあまりいない白色など)
ペドモルフォーシス(幼形進化)
繁殖期が長くなる
性的二型(=雌と雄の違い)が小さくなる(体格差や、雄の牙が小さくなって雌に近い姿になるなど)

従順性は「セット販売」のように他の形質と組み合わされているので、副産物として、鼻づらの短縮、毛色の変化、垂れ耳の出現といった身体的変化も起こる。

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こういう家畜化のプロセスがイヌ・ネコからブタ・ウシ、トナカイやラクダまであらゆる動物について畳み掛けるように示されていく。
それからやっと、「これが言いたかった」というように人間の話につながるため、これまで読んできた知識や推論によって理解しやすくなる。
本書は専門的であり、読み始めるまで理解できるか自信がなかった。というか本当に理解できたとは思っていないが、本書の構造はかなり理解しやすく作られていた。

人間の自己家畜化仮説

人間こそがもっとも家畜化された動物なのではないか。
他の動物と比べて未発達な状態で生まれてくるし、社会性や外見的特徴からも、幼形進化の特徴を有している。
ここまでの説明を踏まえると人間は自己家畜化したように思えるが、どうだろうか?ということを本書は検討している。

 

 

大型犬~本筋とは離れるが、気になった話

ゾウの時間ネズミの時間、というように大型動物の方が長生きする。ハムスターの鼓動はすごく速くて、「生き急いでる」感があり、悲しくなるくらい流れている時間が違うと実感させられる。
なのに、犬の場合は、小型犬が20年近くも長生きして、大型犬は短命である。それが以前から疑問だった。

哺乳類には、大型種の方が小型種よりも寿命が長いという法則がある。ゾウはネコよりも、ネコはネズミよりも長生きといった具合である。ところが、諸犬種はそうではない。イヌでは大型犬種の方が早死にしてしまう。アイリッシュ・ウルフハウンド、グレート・デーン、ニューファンドランドの寿命はわずか6~8年だ。

(略)
犬が先の法則に当てはまらないのは、いま見てきたように、遺伝的に重荷を背負っているためかもしれない。
哺乳類一般の傾向と逆になっているのは、「太く短く生きる」という生活ペースの法則で、ある程度は説明できる。大型犬種が大型なのは成長が速いためである。成長が速ければ、一つの細胞が一分間に消費するエネルギーが小型犬種よりも多くなる。ほとんどの哺乳類では、大型種は実際には小型種よりもゆっくり成長する。つまり、小型種よりも長期間成長し続けるからこそ大型になるのである。(略)イヌの諸品種では、成長の速いものを人為選択して大型種を作り出しているために、この傾向が逆転しているのである。(略)心臓や骨格などに欠陥があった場合、成長の速い犬種では、成長の遅い犬種に比べてその欠陥の影響が顕著に現れる可能性がある。また、成長が速ければ細胞分裂も増えるので、がんの発症率も高くなりがちというわけだ。

 
大型のネコ(ノルウェージャンとか)はゆっくり成長し、骨格が完成するのが遅い。それとは対照的に、大型犬は成長が速いから大型になっている。

本書ではケネルクラブによる犬種作出の歴史についても詳述されている。グロテスクな領域にまで達した人為選択の例である。