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「もう、服は買わない」ー広告と幻想、物欲の関係

コートニー・カーヴァ―「もう、服は買わない」(ダイヤモンド社、2020年)

プロジェクト333とは

本書で紹介されているプロジェクト333とは、3か月間、33アイテムで過ごすというチャレンジのこと。
アイテムには衣類(下着類やパジャマなどは除く)のほか、靴やアクセサリー、バッグも含まれる。
気温などに応じて、アイテムを入れ替えてもよい。

このチャレンジをすることで服選びや買い物に割く時間やエネルギーが減り、自分にとって本当に必要なことに集中できる…といったものだ。

 

私は服をアプリで管理しているので、本書を読んで季節ごとにアイテムを選んでみたのだが、
「夏」というタグをつけたアイテムが27、
「秋」は13しかなかった。
実際数えてみると33アイテムというのは結構余裕があり、ファッション好きの人でも意外と満足できる数字だと思う。

 

広告による「思い込み」

プロジェクトそのもの以上に興味深かったのは、著者がもともと広告業界にいたということだ。
その経験を踏まえ、広告によっていかに我々が物を買うよう思い込まされているかということが繰り返し語られる。
この記事では、プロジェクト333のやり方よりも、広告に着目してみたい。

モノで人生は変わらない

実のところ、人生をがらりと変える服など存在しません。あなたを別の人間のように思われてくれるアイテムもありません。いくらショッピングをしたところで、過去を修正することも、未来をバラ色にすることもできません。「もっと」が答えではないのです。

これを買うと人生が変わる、かのように幻想を抱いて服やコスメを買ってしまうというのはよくあることだ。

本当に新しい服が「必要」だからという理由で、買い物をすることはめったにありませんでした。退屈を紛らすため、仕事のうさを晴らすためにショッピングをしていたのです。新しいものを買えば少しは幸せになれるし、よりよい人生が実現すると、本気で信じてもいました。

ショッピングセラピーというやつか。いっときは気がまぎれても、すぐに効果は切れて他のものが欲しくなる。

 

モノやショッピングで気分が上向くことはない

心の叫びに耳を傾ける時間を持てば、今必要なのは近所のショッピングモールやお気に入りのオンラインショップでの買い物ではないことがわかるはずです。ですから一時の気晴らしに走るのはやめて、本当の意味で自分をいたわってセルフケアをしましょう。

(略)

企業やショップの広告は、「この商品こそあなたの苦しみをやわらげます」と、さかんに訴えかけてきます。でも、一人で過ごす静かな時間を少しでも持てば、心の声に耳を澄まし、自分が一番必要としているものがわかってきます。

本当に自分に必要なのは買い物なのか。睡眠、入浴や休息ではないのか?

自分の体が買い物を必要としているなんてことは、まずないはずだ。

 

広告は「足りない」と思わせるのが仕事

 

服を着る、服を買う、何を着るか決める。そんなことに、どうして労力を費やすの?

・満たされず、不安だから
マーケティングの戦略を練る人たちは「今のままじゃ足りない」と、私たちにけしかけてきます。実際、私たちは1日に5000以上もの広告にさらされています。1970年代には500だったというのに(それでも多すぎますね)。私自身、以前は広告会社の幹部として働いていました。ですから、はっきりと言います。広告会社や雑誌のメッセージは「この商品を購入すればよりよい人間になれる」と訴えかけているのです。もっと美しくなれる、もっと成功できる、もっと愛されるようになりますよ、と。それが彼らの仕事なのです。こちらから「もう結構!」と言わない限り、そうしたメッセージは際限なく垂れ流されてきます。

欠乏感を植え付ける→これがあれば欠落を埋められますよ、という流れだ。

 

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あなたが何か足りないと感じているのなら、その欠乏感はこちらの商品で埋められますよ、と必死で説得しているのです。だから、「あなたには何かが足りない」と消費者に感じさせることに集中するのです。「足りない」と思ってもらえれば、その隙間を埋める商品を売り込めるからです。

もともとそんな欲望など持っていなかったのに、広告によって呼び覚まされる、「自分に必要なのはこれだ」と思わされるということもあるだろう。

実際には、そもそも他人は自分のことをそんなに気にしていないのだが。

 

買い物にそんな効果はない

完璧なスカーフ、ベルト、ジャケットがあれば全身の装いがまとまるとか、このスカーフをかわいく結べばコーディネートが完成するとか、あなた自身も完成するとか、吹き込まれていますよね。ふさわしい装いをすれば、もっとみんなに関心を持ってもらえる、中身のある人間になれる、完璧な人生を送れるようになる。私は能天気にも、何か買い物をすれば、不安や恐怖心、不満といったものを解消できると楽観していたのです。もちろん、ショッピングにそんな効果はまったくありませんでした。

結局、変わりたいとかもっとこうなりたいとかいう願望を、お手軽に満たせる(ように見える)のが買い物なのだ。それは実に表面的なことにすぎない。

本当になりたい方向に変わるには、我慢や努力が必要だ。時間だってかかる。ダイエット一つ取ったってそうだ。簡単に、ネットショップでポチるようには済まない。

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買い物を減らす方法

ショッピングを断つには

・しばらく待つ
「これ、絶対に欲しい!」と思ったものは、きっと来月になっても買えるはず。ですから買い物をする前に、とりあえず30日間待ってみましょう。そして30日が経過したあと、そのアイテムがまだ必要と思えるか、素敵に思えるか、よく考えてみましょう。私はこの「とりあえず待つ」方法を実践したところ、かなりの金額を無駄遣いせずに済みました。というのも「絶対に欲しい!」と思ったアイテムのことなど、数日も経てばすっかり忘れてしまうからです。

(略)

・ものに期待するのをやめる
ものに、あなたの人生を変える力はありません。何を買ったところで、それでよりよい人間になれるわけではないのです。
あなたをよりよい人間にできるのは、あなただけです。

時間をおこう

「しばらく待つ」のは本当に有効で、私も実践している。

スマホのメモに、

・○○のアイライナー

・○○色のスカート

とか書いておいて、しばらく放置する。後で見ると、別に要らないなとなって、

・○○のアイライナー→今度でいい

とか書き込んでいる。

時間を置いて本当に欲しかったらその時でも買える、というのを妨げてくるのが、限定商法やタイムセールなど、「今買わないと!」と思わせる戦略だ。

冷静さを失わせ、即決させることが狙い。それでも、似たようなものは手に入るだろうし、全く同じじゃなくても必要な物だったら同じようなものを買うだろう。

まずは落ち着こう。

 

 

ものに幻想を抱くのをやめよう

物に期待するから、これで変われるみたいに思って買ってしまうのだ。

繰り返しになるが、変わるには、我慢や努力、時間が必要。インスタントにはいかない。

買い物を減らしてできた時間やエネルギーを、本当に変化を起こすための努力に注ぎ込もう。

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