前編はこちら。
旧版の表紙はなかなか強烈である。
3.労働と浪費、労働のコスト
時間の欠乏、ストレス、消費
残業続きだと遊ぶ時間もないのでお金が貯まるかと思いきや、ストレスで散財してしまう…という経験をした人も多いのではないか。
時間消費的でストレスの多い仕事はあらたな消費圧力を形成する。職場での労働時間が長くなると、時間と手軽さを重視するようになる。買う余裕のある人は、調理済み食品や持ち帰り用食品を購入したり外食したりする。また、ベビーシッターや掃除人を雇う。
(略)
何人かのダウンシフターが証言するように、職場の不満もまた支出の原因になる。「お金といえば、私がしている仕事が原因の満たされない気持ちや空虚な感じを埋め合わせるために、やみくもに遣いました。……ただ自分を保つために遣ったのです」
長時間労働→料理する時間もない→割高なテイクアウトや外食にお金を使う。
お金だけでなく健康にもよくない行為である。働いてお金を得たはずが、働かなければ使わなくて済んだお金というのも馬鹿にならないと思う。
食費以外にも、腰痛でマッサージに行くとか、判断能力が鈍ってネットで衝動買いとか、体調を崩して医療費とか…そんなに働かなければ不要だった出費である。
ダウンシフター
90年代に書かれたのに既にダウンシフターがいたというのが意外だが、収入も減るけど支出も減らして生活をダウンサイジングする人たちが登場する。
ドミンゲスの計画は、(略)富を得ることによってでなく欲望を小さくすることによって、労働の世界ですり潰されてしまうことからの解放を約束したものである。
(略)
彼らの計画は、すべての消費を細かく追跡することを伴う。単に追跡するだけでなく、たとえ買いたいと思ったものが何であっても、その価値をそのために金を稼ぐのに必要な時間と比較して吟味する。その計算は、働く時間をすべて考慮に入れ、仕事着の費用や、あまりにも疲れて料理できないので持ち帰り料理を買う費用を含め、仕事に関係する全経費を差し引いて、実際の時間賃金を決定する。実質賃金率が与えられることによって、あなたは、新しいカウチが三週間の労働に値する価値があるかどうか、四泊五日のバハマ旅行が一か月の稼ぎに匹敵するものかどうか、あるいは朝一杯のラッテにこだわってもう30分働きたいかどうかを計算することができる。その計画に従う人は、こうしたことを問題にするときには消費を減らすようになる。以前よりはるかに少なくなる。
ここでは、仕事に関する経費として料理できない分の費用とかまで算入しているところが厳密でよい。定時で帰れていれば家にあるもので食事を済ませられたのに…ということは多い。
この方法で、「あと△△時間余計に働いてでもそれが欲しいか?」と自問自答したら余計な出費はかなり減りそうだ。
労働の世界ですり潰されてしまいたくない!切実な思いである。