生きるためのセミリタイア

当たり前を疑い、40代セミリタイアを目指す

コロナ禍とその後の世界を生き抜く「馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。」

藤森かよこ「馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。」(KKベストセラーズ、2020年)

 

身も蓋もない言い方が爽快な、「馬鹿ブス貧乏」シリーズ2作目。続編が出たと知って、即買ってみた。

 

 

概要

2020年のネット連載がもとになっているそうなので、全体としてコロナ禍に関係した内容となっている。
「共同謀議論」「某有料会員制セミナー」とか、「地球の支配者は宇宙人だという説もある」とか、???という部分も前作に引き続きあるのだが、まぁそういう考え方もあるのねくらいで読めるので大丈夫だ。また、今作も興味を惹く多数の本が紹介されており、ブックガイドとしても活用できる。

馬鹿ブス貧乏=そのへんにいる普通の女性のサバイバル、という観点では、コロナ以前より状況は一層厳しくなっており、それに加えてAI化、ロボット化でほとんどの人が「無用者階級」になってしまう未来が予測される。それはピンチと思えるが、男性でも大して稼げなくなるのだからチャンスでもある、と応援している。

以下では、印象に残った箇所を紹介したい。

家族神話に冷や水を浴びせる

とはいえ、親になる人のかなりは自覚も覚悟もなく、避妊や中絶し損なって親になるので、親になる人々の30%はまともな親になれない。こういう事実を、私たちは認識しておくべきだと思う。きれいごとの家族神話で脳を薄らぼんやりとさせておいてはいけないと思う。この30%という数字に根拠はない。私の観察による勝手な推測だ。すみません。

「し損なって」とは、ちょっとひどい…そして数字に根拠はない。でも、きれいごとで薄らぼんやりしてる場合ではないのは明白だ。

「はっきり言えば、「子どもたちよ、親相手でも油断するな」と、私は子どもたちに言いたい。大人には、「家庭は何をやっても許される場所ではないし、家族に対して甘ったれるな」と言いたい。
外でストレスの多い賃金労働をしているのだから、家庭の中でくらいは、気楽に好き勝手にわがままにふるまいたい?凡人のあなたは、そこまで非常に重要な仕事などしていない。単なる賃金労働者がえらそうなことを言ってはいけない。

なんか、家庭内ももちろんだけど、駅などで女性やベビーカーに八つ当たりする人とかも、自分でも気づいてないかもしれないがこんな意識を持っているのではないかと思う。

家族についての考え方が、身も蓋もなくてとにかくスカッとする。著者は家族神話の夢を徹底的に壊していく。

先進国で出生率が上がることはない。非婚化は進む。結婚や家族形成や子育てよりも、自分個人の生きがいを優先させる人々は確実に増えている。家族神話の洗脳は解けつつある。時代は変わる。人間も変わる。変わらないものなどない。
今どき、結婚をせよ、子どもを産み育てよ、と騒いでいるのは、伝統的結婚制度や家族制度により恩恵を得てきた男性高齢者くらいだろう。日本の主要政治家のほとんどが、この種の伝統的結婚制度や家族制度から甘やかされてきただけのジジイであるのが問題だ。

そう、家族神話の陰で実の親からひどい目に遭わされている子どもは大勢いる。現実は家族=ハッピー、ではないことなんて虐待のニュースなどでとっくに分かっているのに、育児も介護もなんでも家族に丸投げしておけば大丈夫、と思い込みたい人が多いのだろう。そして「ジジイ」たちはそれで得してきたのだろう。

そうやって丸投げした結果、女性の就業率が高く「福井の女性は働き者」と言われている福井県で、「自慢の嫁」が義両親(90代)と夫(70代)の3人をたった一人で介護し、過労で追いつめられた末に3人とも殺害してしまった…という事件などが起こるのだ。しわ寄せは弱者に行くというのは、コロナ禍でも再度明らかになったことだ。

AI化、ロボット化が進んで雇用消滅した世界

SFみたいな話なのだが、「雇用が消滅した世界でどう生きるか」ということなのでセミリタイア界隈の人の興味を惹きそうだ。

世間や他人の評価や是認ではなく、自分で自分を是認できるような生き方ができる自分自身を模索し創っておかなければならない。
「どんな時代になっても、誰に理解されなくても、カネにならなくても、私はこれだけのことができるなら生きていける」と思えるような、「これだけのこと」を持っているなら生き延びることができる。言い換えれば、「無心に夢中になれること」を持っているならば生きることができる。

カネを使わないと時間が潰せない生活をしているわけにはいかなくなる。金に頼らずに自分で自分の時間を充実させることが必要なのだ。
(略)
ひとり遊びが上手で、かつそのひとり遊びの内容を面白く表現できて、そのひとり遊びの意義を説明できる人間は強い。

セミリタイアラーは、時代を先取りしていると言えるのではないか?セミリタイアブログなどを読んでいると、自分はこれさえできれば幸せだ!という人が多い。自分自身をよく知っていることが、セミリタイア・アーリーリタイアには不可欠とよく言われるが、本書の近未来サバイバル術との思わぬ共通点を発見できた。

 

おわりに(ネット記事など)

本書の一部はこちらで読むこともできる。人との関わり方など、参考になる部分が多かった。

報酬は高いが不幸でストレスフル「クソどうでもいい仕事」を続ける人を待ち受ける悲しい現実 「これさえできればいい」と言えるか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

著者について調べていたらインタビュー記事が出てきて、そこで初めて写真を見た。文章からイメージしていたよりもずっと素敵なマダムだったので(失礼ながら)驚いた。

藤森かよこさんインタビュー 馬鹿ブス貧乏で低スペック女子の成れの果てが教える実践的サバイバル術|好書好日

馬鹿にもブスにも貧乏にも見えないのだが、著者の定義は独特で広めなのだ。

前作の感想はこちら。

 

fluffysamoyed.com