生きるためのセミリタイア

当たり前を疑い、40代セミリタイアを目指す

肉体という牢獄

・人生100年時代と言われても

人生100年時代、ライフシフトだとか言われても、別の肉体に取り換えることはできない。
知能も、気質も大して変えられない。

自分以外の人になることはできない。

持病とか骨格とか、変えられない要素がたくさんあって、
たった一つの肉体に閉じ込められたまま80年とか100年とか生きるなんて、気が遠くなる。

肉体という牢獄。

懲役100年時代じゃないか。

たまたま恵まれた環境に生まれ、健康な肉体を持って生まれた人は、ライフシフト、マルチステージとかいって色々チャレンジすることにエネルギーを注げるかもしれない。
でも、例えば歯がボロボロとか、アレルギーとか、辛い記憶とか、対人関係が苦手とか、そういう諸々も抱えたままで生きていかざるを得ない。
長生きするうちに時間や科学技術が解決してくれる?全部がそうではないだろう。

・別の人生を生きる?

すべてを捨てて失踪し、別の土地で第二の人生を始めたとしても、肉体は取り換えられない。
どこまでもついてくる。閉じ込められている。
別の人生を生きることができないからこそ、そこから逃れたくて本を読むのだと思う。

自宅最寄り駅は無難な話題ではない

職場の人が結構な人数、普通のノリで最寄り駅を聞いてくるのだが、これは一般的なことなのだろうか?

もちろん、必要書類とかには記入しているし、出張の精算に必要とかなら伝えるのだが、私は抵抗があるので○○線とか言ってごまかしている。

別にその人自身がストーカーになるとか疑ってるわけじゃなくて、一人に伝えると話した覚えのない人まで知っていたり、個人情報についての考え方が違いすぎて恐ろしいから、あまり言いたくないのだ。
飲み会帰りの電車内で、一人暮らしという前提とともにどこまで乗るのか大声で聞いたりするし。
誰が聞いているか分からないのに、被害者を物色している犯罪者に目をつけられ、後をつけられたらどうするんだ。

職場以外でも、初対面で複数人いるような場で、出身地くらいの感じで聞く人(主に男性)が多いけど、適当に広いエリアを言って誤魔化すことにしている。
こっちは変な人に目をつけられたら引っ越し=数十万の損害だし、お金だけで済まないかもしれない。
別にその人を変な人と思っているわけじゃなくても、そういう一律対応にせざるを得ないのだ。
どれくらい警戒心を持って生活しているか、想像もしたことないんだろうな…1階に住んで洗濯物も干せるしな…と、うらやましくなる。

また、最寄り駅からは経済状態なども大体推測できてしまうし、年収や家賃を聞くほどでないにしても、無礼な質問だと思う。

答えないか誤魔化すことによって、最寄り駅は無難な話題じゃないということを浸透させていきたいと思っている。

街頭のニュース映像に思うこと

通行人を顔がわかるくらい撮ってるニュース映像が嫌いだ。
猛暑日に日傘を差した女性とか、風物詩みたいな感じのもの。

特に都心で積雪があった日などは、転べ転べと期待している感じがして不快だし、豪雨に遭っている制服姿の女子生徒を撮りがちなのも、なんか気持ち悪いと思ってしまう。

映るのはそこそこ人数だし、通行人の承諾なんていちいち取ってないはず(私が知らないだけで承諾取っているのか?)。
私は心配性なので、ストーカーから逃げてる人とかが映ったらどうするんだなどと思ってしまう。
今はまぁ、マスクで顔が隠れてるからマシだと思うが。
顔なんて個人情報だから、路上や公共交通機関などでは不特定多数に公開せずに隠しておいてもいいんじゃないか。

コロナ禍とその後の世界を生き抜く「馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。」

藤森かよこ「馬鹿ブス貧乏な私たちを待つろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。」(KKベストセラーズ、2020年)

 

身も蓋もない言い方が爽快な、「馬鹿ブス貧乏」シリーズ2作目。続編が出たと知って、即買ってみた。

 

 

概要

2020年のネット連載がもとになっているそうなので、全体としてコロナ禍に関係した内容となっている。
「共同謀議論」「某有料会員制セミナー」とか、「地球の支配者は宇宙人だという説もある」とか、???という部分も前作に引き続きあるのだが、まぁそういう考え方もあるのねくらいで読めるので大丈夫だ。また、今作も興味を惹く多数の本が紹介されており、ブックガイドとしても活用できる。

馬鹿ブス貧乏=そのへんにいる普通の女性のサバイバル、という観点では、コロナ以前より状況は一層厳しくなっており、それに加えてAI化、ロボット化でほとんどの人が「無用者階級」になってしまう未来が予測される。それはピンチと思えるが、男性でも大して稼げなくなるのだからチャンスでもある、と応援している。

以下では、印象に残った箇所を紹介したい。

家族神話に冷や水を浴びせる

とはいえ、親になる人のかなりは自覚も覚悟もなく、避妊や中絶し損なって親になるので、親になる人々の30%はまともな親になれない。こういう事実を、私たちは認識しておくべきだと思う。きれいごとの家族神話で脳を薄らぼんやりとさせておいてはいけないと思う。この30%という数字に根拠はない。私の観察による勝手な推測だ。すみません。

「し損なって」とは、ちょっとひどい…そして数字に根拠はない。でも、きれいごとで薄らぼんやりしてる場合ではないのは明白だ。

「はっきり言えば、「子どもたちよ、親相手でも油断するな」と、私は子どもたちに言いたい。大人には、「家庭は何をやっても許される場所ではないし、家族に対して甘ったれるな」と言いたい。
外でストレスの多い賃金労働をしているのだから、家庭の中でくらいは、気楽に好き勝手にわがままにふるまいたい?凡人のあなたは、そこまで非常に重要な仕事などしていない。単なる賃金労働者がえらそうなことを言ってはいけない。

なんか、家庭内ももちろんだけど、駅などで女性やベビーカーに八つ当たりする人とかも、自分でも気づいてないかもしれないがこんな意識を持っているのではないかと思う。

家族についての考え方が、身も蓋もなくてとにかくスカッとする。著者は家族神話の夢を徹底的に壊していく。

先進国で出生率が上がることはない。非婚化は進む。結婚や家族形成や子育てよりも、自分個人の生きがいを優先させる人々は確実に増えている。家族神話の洗脳は解けつつある。時代は変わる。人間も変わる。変わらないものなどない。
今どき、結婚をせよ、子どもを産み育てよ、と騒いでいるのは、伝統的結婚制度や家族制度により恩恵を得てきた男性高齢者くらいだろう。日本の主要政治家のほとんどが、この種の伝統的結婚制度や家族制度から甘やかされてきただけのジジイであるのが問題だ。

そう、家族神話の陰で実の親からひどい目に遭わされている子どもは大勢いる。現実は家族=ハッピー、ではないことなんて虐待のニュースなどでとっくに分かっているのに、育児も介護もなんでも家族に丸投げしておけば大丈夫、と思い込みたい人が多いのだろう。そして「ジジイ」たちはそれで得してきたのだろう。

そうやって丸投げした結果、女性の就業率が高く「福井の女性は働き者」と言われている福井県で、「自慢の嫁」が義両親(90代)と夫(70代)の3人をたった一人で介護し、過労で追いつめられた末に3人とも殺害してしまった…という事件などが起こるのだ。しわ寄せは弱者に行くというのは、コロナ禍でも再度明らかになったことだ。

AI化、ロボット化が進んで雇用消滅した世界

SFみたいな話なのだが、「雇用が消滅した世界でどう生きるか」ということなのでセミリタイア界隈の人の興味を惹きそうだ。

世間や他人の評価や是認ではなく、自分で自分を是認できるような生き方ができる自分自身を模索し創っておかなければならない。
「どんな時代になっても、誰に理解されなくても、カネにならなくても、私はこれだけのことができるなら生きていける」と思えるような、「これだけのこと」を持っているなら生き延びることができる。言い換えれば、「無心に夢中になれること」を持っているならば生きることができる。

カネを使わないと時間が潰せない生活をしているわけにはいかなくなる。金に頼らずに自分で自分の時間を充実させることが必要なのだ。
(略)
ひとり遊びが上手で、かつそのひとり遊びの内容を面白く表現できて、そのひとり遊びの意義を説明できる人間は強い。

セミリタイアラーは、時代を先取りしていると言えるのではないか?セミリタイアブログなどを読んでいると、自分はこれさえできれば幸せだ!という人が多い。自分自身をよく知っていることが、セミリタイア・アーリーリタイアには不可欠とよく言われるが、本書の近未来サバイバル術との思わぬ共通点を発見できた。

 

おわりに(ネット記事など)

本書の一部はこちらで読むこともできる。人との関わり方など、参考になる部分が多かった。

報酬は高いが不幸でストレスフル「クソどうでもいい仕事」を続ける人を待ち受ける悲しい現実 「これさえできればいい」と言えるか | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

著者について調べていたらインタビュー記事が出てきて、そこで初めて写真を見た。文章からイメージしていたよりもずっと素敵なマダムだったので(失礼ながら)驚いた。

藤森かよこさんインタビュー 馬鹿ブス貧乏で低スペック女子の成れの果てが教える実践的サバイバル術|好書好日

馬鹿にもブスにも貧乏にも見えないのだが、著者の定義は独特で広めなのだ。

前作の感想はこちら。

 

fluffysamoyed.com

 

時代ものに興味が持てない

・興味が持てない理由

本を読むのは好きだが、全然手を付けていないジャンルがある。時代小説だ。

時代小説って狭めの本屋でもしっかり棚があったり、かなりのスペースを占めているので、一定以上の人気があるのだろう。長く続いているシリーズも多い。

時代ものというと主に江戸時代だと思うが、昔の話だからしかたないけどまず男性中心だし、どうしても女性の生き方に幅がなくて、誰々の娘、おかみさん、あとは遊女とか。
なんか運が100%みたいな感じで、だいたい耐えるしか選択肢がないから、息苦しくて興味が持てないのかもしれない。

歴史でも、戦国時代とか根強い人気があって、好きな人には悪いけど私は正直どうでもいいと思ってしまう。
教養がないと言われてもしかたないのだが、信長・秀吉・家康以外の人物や○○の戦いやらを、たとえに使われてもよく分からなくて困ってしまう。野球のたとえより困るかもしれない。
権力争いとかに興味がなさすぎて、全然覚えられないのだ。

・昔の人の暮らし

しかし、昔の人が何を食べてどんな暮らしをしていたかといった内容には興味がある。
杉浦日向子「一日江戸人」など、面白いので何度も読み返している。
庶民が楽しくテキトーに暮らしているところがよい。

もっとさかのぼって、どんぐりを食べられるようにする工程とか、貝塚からこんなものが出てきたとかも結構楽しい。

興味の対象が正史か稗史か、という違いなのかもしれない。

文藝2021年春季号「夢のディストピア」感想

文藝2021年春季号を読んでいるので、掲載作品についてメモを残しておく(まだ全部読めていない)。

 

文藝 2021年春季号

文藝 2021年春季号

  • 発売日: 2021/01/07
  • メディア: 雑誌
 

 

 

児玉雨子「誰にも奪われたくない」

惹句にあった「距離を取るのも会えないのも、みんなそんなにさみしい?」が気になり、楽しみにしていた作品。
アイドルグループに楽曲提供した主人公と、そのアイドルの一人が交流する。

わざわざ文芸誌を読むような偏屈な人(私を含む)は、主人公の他者との距離の取り方に共感を覚えると思う。
思わず「そっ閉じ」したくなるメールが登場するのだが、その高圧的な感じが、そこだけでも読んでほしいくらい見事なので必見。
電子機器をはじめ、小物の使い方も印象的だった。

山下紘加「エラー」

主人公は、可愛い容姿とのギャップが売りの大食いクイーン。

大食いと文学ってだいぶ遠いところにあると思うので、新鮮な組み合わせ。
フードファイターのトレーニングなど、知らないことが色々出てくるのも楽しい。読後、大食いについて調べてしまった。
主人公の恋人に対し、読んでいてイライラしてくる感じが絶妙。
私は胃弱なので、読んでいるだけで満腹になってしまい、ちょっと胃が気持ち悪くなりながらも続きが気になってどんどん読んでしまう作品だった。

特集:夢のディストピア

対談 飛浩隆×高山羽根子「ディストピア小説の主人公とは誰か」

高山
先ほど全体主義という言葉が出ましたが、たくさんの人が社会で生きていくために、ひとつの方向を向いている方が生きやすいという見方がありますよね。でも、そのときに違う方向を向いてしまった人の物語がディストピアなんです。

 

高山
たぶんわれわれ作家は、みんなが同じ方向を向いているときに、なるべくキョロキョロしようとする生き物なんだと思うんです。
 作家なんていうのは、村のちょっとヤバい奴みたいなところがあって、なんか変なことばっかり言っているな、と思われている人なんですよ。聞いてもらえるかもらえないかはわからないけれども、何かそういうことを言いつづける生き物。それがありがたがられる巫女になるのか、村のはずれのヤバいおばあちゃんになるのかはまた別なんですけどね。

出典:文藝2021年春季号(河出書房新社)

SFファンというわけではないのだがディストピアものが好きなので、この特集に惹かれて購入した。
「違う方向を向いてしまった人」という指摘があるが、ディストピア作品では「この世界だったらそんなに嫌じゃないかも…」というものもある。例えば「一九八四年」の世界にはあまり住みたくないが、「すばらしい新世界」だったら結構幸せに暮らせると思う。休暇を取ったみたいに気分がよくなる薬が配給されるし、生殖からも解放されている。
確かに、「すばらしい新世界」も、大多数の人たちとは違ってその世界で疑問を持ってしまった人や、外部からその世界に来た人の視点が入るからこそ物語が展開していくのだ。

金原ひとみ「腹を空かせた勇者ども」

主人公はコロナ禍の中、バスケ部で頑張る中学生。
以前、金原ひとみと綿矢りさの対談で、「最近の若い世代は(自分たちがその年齢だった頃と違って)ものすごく健全でいい子で、びっくりする」といった話をしていたのだが、この感覚が本作に活かされているような気がした。

作品と関係ないが、私も同様に驚いた経験がある。テレビのニュース番組で新社会人に対し街頭インタビューをしており、とても自然な様子で「今まで育ててもらって感謝している。親と社会に恩返ししていきたい」と語る新社会人がいた。それを照れるでもなくさらっと言えるのがとても眩しく、羨ましいとさえ思った。

真藤順丈「オキシジェン」

作家や詩人、画家たちが「グッドエア社」の治験を受けている。
施設内で同社の高濃度酸素(アロマなども入っている)を吸入して集中力を上げ疲労回復しながら、「来るべき未来」をテーマに創作を行うのだが…という話。

これこれ、ディストピアってこんな感じだよね、待ってました!という印象の作品。
なんとなく急いで終わってしまったような感じがしたので、もう少しじっくりと単行本一冊分くらいになったものを読みたいと思った。

高瀬隼子「休学(国産のため)」

「男が二人目を産むのはおかしいですか」人間職員の私は、休学届を手にした学生に慌てて首を振った。

この短いフレーズで十分興味をかき立てられる。「男が二人目を産む」の部分はもちろんだが、「人間職員」?人間じゃない職員の方が多いのか?と。
ディストピア×生殖という作品が特に好きなので、楽しく読んだ。
似たテーマの作品としては、村田沙耶香「消滅世界」、田中兆子「徴産制」などを思いつく。
「侍女の物語」はどうか?女性だけが妊娠出産していることは変わらず、科学技術の進歩という要素がないから少し違う。

学食にも図書館にも、妊娠体優先席があるし、全ての講義室の席はゆったりと広く、妊娠体でも窮屈にならないスペースを取ってある。トイレも広いし、医務室のベッド数も多い。むかし、女性しか妊娠できなかった頃は、こんなに設備が整っていなかったと聞く。出産だって痛かったらしい。それもものすごく。意識があるまま、痛みを感じる状態で体を切り裂いていたなんて、正気の沙汰じゃない。そんな旧時代的な出産方法は、男性の妊娠が可能になるのと同時に、当然廃止された。

そう、私もそう思う。当事者が女性だけだから、縄文時代みたいなままでなんとなく放置されているに違いない。
(過去記事 )

fluffysamoyed.com

 
スマホとか十分進歩したしもう一旦置いといてもらっていいから、妊娠出産の方法と、あと傘にイノベーションを起こしてほしい。どっちも基本構造が100年前から大して変わってないと思う。

本作は出産に関わる制度以外にも、主人公がポリコレ的観点から発言にかなり気を遣っている点も印象に残った。

化粧どころか保湿も面倒になってしまった

最近、スキンケアを面倒に感じるようになってしまった。

2020年、化粧をする機会はめっきり減っていたのだが、それでも肌の保湿はせっせと続けており、外出の予定はなくともいろんな基礎化粧品を塗りたくっていた。

導入化粧水→オイル→化粧水→導入美容液→美容液→クリーム→アイクリーム
これが基本ステップで、朝と夜、季節やコンディションで使い分けるものもある。手足など体の保湿には、また別のものを使っている。
最低限には程遠い品数だ。

シカ、ヨモギ、ドクダミ、発酵にビタミンCにプロポリス…
新製品を試すのも、コスパのいい商品を探してセールで入手するのも楽しみだった。
欲張りなので日本の製品だけでは飽き足らず、iHerbにある海外製品や、韓国コスメにも手を広げていた。それが楽しかったのだ。

でも今は、ずらりと並んだボトルに少しうんざりしてきている。
これらを次々塗っていくことを考えると気が重くて、洗顔や入浴自体が億劫になってしまったのだ。

試しに一日、朝の洗顔も保湿もしなかった。
何も起こらなかった。

全く誰にも会わない生活ではないので、入浴を何日もさぼるわけにはいかない。冬とはいえ、スメハラ加害者になってしまう。あと、シーツなどの洗濯頻度を上げる方が面倒だ。
入浴のハードルを下げなければいけない。
そこで、スキンケアを減らしていくことにした。
今あるものやストックを捨てはしないが、使い切っても次を購入しない。

この億劫さはたぶんうつ症状とかではなくて、今までが過剰すぎたのだ。
冒頭の基本ステップだけで7工程もある。多すぎて、自分のことだが強迫観念じみたものを感じる。
乾燥肌の人でも、せいぜい半分くらいあれば十分ではないか?減らしてみて変化が起きないか試したい。
2021年はもっとシンプルにしていく。